今朝は遠方に見える山の樹々に白いものが下りていましたが、昼前には温かな日が差して気温が上がり、屋外作業をするのに気持ちの良い天候となりました。そんな『小春日和』に、診療所建設現場の片隅をお借りしてタンパーの制作に勤しみました。
「タンパーってなに?」とヒトから尋ねられたら、あなたはどのように答えるでしょう。意外とうまく答えられず言葉に詰まってしまうのが、この「タンパー」です。
タンパー(TAMPER) は、地面や砂利・アスファルトなどを人力で“転圧=締め固め”するための道具 です。
皆さんもご存知の通り「転圧の道具(=転圧機)」には、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、ロードローラー(下図左)やハンドガイドローラー(同右)など、重機の静荷重を利用して地面を締め上げる重量型。


もう一つは、振動を加えることで土粒子や砕石同士の密着度を高めて転圧を加える振動型。このタイプにはプレートコンパクター(下図左)やランマー(同右)があります。


来週からいよいよ外構の石積みと門扉の制作を進めるにあたり、構造物の沈み込みを防ぐため鉄筋コンクリートを打つ必要があります。この点は事前に把握していたので各方面に教えてもらいながら、自分でもネットで鉄筋コンクリート敷設の方法を調べ上げ、作業工程をシミュレーションしてきました。
ところがここにきて、鉄筋コンクリートの下に敷く砂利へ転圧を加えなければならないことが判明しました。フカフカの地面ではコンクリートが傾いてしまうのです。今さら上記のような大型の転圧機をレンタルするにも余計な費用が掛かります。機械の使用経験がないので扱いに不安もありますし、現場まで重機を運搬する大仕事を考えるだけでも気が滅入ります。。どうしましょう。



冷静に考えてみると、重機が使えないからと言って転圧ができないと悩む必要はまったくありません。数千年前に建造されたピラミッドや万里の長城は、今だに地面へ埋もれることなくその姿を地表に現わしています。エンジンで動く重機が発明されるずっと前から、人類は土を突き固めて建造物を築いてきたのです。必ず動力を使わない転圧の方法があるはずです。
事実、古代エジプトや中国の記録にも、人力で土を突き固める作業が記されています。最初は石や木を手に握って地面をたたき固めていたものが、転圧に特化した道具が開発され(上図中央)、時代が下がるにつれて次第に人力転圧機の構造が洗練されてきました。このピラミッドの時代から脈々と受け継がれてきた土木作業になくてはならない遺産が『タンパー(TAMPER)』なのです。日本でも、江戸時代にはすでに複数人で使うタンパーが土木工事で用いられていた記録があり、この道具はその形状から『タコ』と呼ばれていました(上図右)。
早速ホームセンターへタンパーを探しに行きましたが、タンパーとは名ばかりで物干し竿の先端に鉄板を溶接したような貧弱なもの(下図左)しか置いていませんでした。通販サイトで荷重をかけられるタンパー(同右)を調べたところ58,830円もしました。数回しか使わない道具にそんなコストは掛けられません。


仕方ないので、楽しみ半分でタンパーを自作することにしました。設計図は作成せずに、ホームセンターで買ってきたコンクリート塊に合わせて角材を採寸・切断。



寸法を合わせた角材をコンクリート塊へぐるりと巻き付けるようにネジ止め固定し、取っ手を付けて完成です。



いかがでしょう?緻密な計算のもと、コンクリート塊の荷重を無駄なく活用することで、地面へ絶大な衝撃を伝えるストラクチャー。
『機能性』と『美しさ』という二兎を追いながらも見事に成功してしまったフォルム。
<抜けば玉散る氷の刃、邪を退け妖を治める>と形容される妖刀に因んで、『村雨』と名付けました。
来週からこの『村雨』を用いて転圧をかけるのが楽しみです。
追記 診療所が完成する2026年2月以降、『村雨』を使用することもなくなります。いらないからと言って、分解処分するにはあまりにも惜しい逸品です。もし地面を締め固めることの好きな方がいましたら、抽選で1名にお譲りします(要:現地引き取り)。

