バチッッじゅーーーーーーっ。
自分の体から響くことを想定していなかった異常音が聞こえ、指間から煙がボワッと吹き出しました。体の一部からこんなに煙が出るものだと、このとき初めて知りました。そういえば右手に握った黒くくすんだ棒は、今しがたまで内側から真っ赤な光を放っていた物体と同一のもの、つまり1300℃前後まで加熱された鋼 (はがね)です。
今村さんに案内されて急ぎで工房の外へ飛び出し、ドラム缶いっぱいに溜められた雨水で右手を冷やしました。そっと掌を観察してみると、表面の一部が焼鳥屋で注文する鳥皮の上手な焼き加減のようにうっすら黄色味をおびていました。
大げさに立ちのぼった煙から大惨事を覚悟しましたが、ぼーっとしていたわりに手を離すのが早かったのか、あるいは生来掌の皮が厚いのか、幸いにも火傷は浅くてすみ、受傷の後も同じ右手に金槌を握って、トン・カン・トン・カンと金床(かなどこ)で鉄を打ち続けることができました。2週間たった現在は、すでに根治しています。



以前ロートアイアンの解説と、ロートアイアンを用いた装飾のデザインの記事を載せました (『ロートアイアンをご存知ですか?』)。「ぜひ作成の現場を見せて欲しい」と伝えておいたところ、先日CRAFの今村さんから連絡があり、早速若穂にある工房へ見学に伺いました。



工房では見学だけでなく、作業の一部も体験させていただきました。
まずは、鉄板を切り出して作った『kamado』の文字に凹凸をつける作業です (↑)。ここで必要な工程が、前述の1300℃にまで達する加熱と、鉄が熱いうちに金槌で打ちつける作業です。平坦な鉄板に意匠が生まれ、味わい深い逸品が生まれました。ここにナナカマドの葉と赤い実の装飾を加え、鉄の色味を損なわない程度に塗装したら完成します。この逸品は診療所の入り口を入った正面、受付の背面に飾られる予定です。診療所にいらっしゃる際には、ぜひ気にかけて見てください。
次にロゴマークの鳥の翼を造っていきます (↓)。棒状の鋼材先端を鉛筆のように尖らせ、デザイン画に描いた曲線と同じラインになるよう曲げていきます。熱して、叩いて、冷えたらまた加熱を繰り返します。手袋をすると握りがあまくなるため、この工程は基本的に素手で行います。前述の火傷をしたのはこの時です。



イメージ通りに形ができたら、曲げた鋼材をチョークの印のところで切断し、二つの部品を切り出します。この二つの部品を溶接することで、翼の右側のパーツができます (↓)。
パーツごとに形作ったものを、やはり溶接でつなぎ合わせることでひとつの作品が完成します。この大きなロゴマークは、駐車場からみて建物正面の外壁に固定し、夜間はスポットライトで照らします。



今村さんとは、手を動かしながらいろいろな話をしました。今村さんの職人修業時代の話、クライミングの話、私の沖縄やノルウェーやモザンビークで暮らしていたころの話・・・。私が京都の大学生時代に様々な飲食店でアルバイトを経験 (日本料亭、お好み焼き屋、寿司屋、串カツ居酒屋、ラーメン屋)し、いまも料理をするという話をしたところ、帰り際に今村さんが工房で作ったばかりのフライパンをプレゼントしてくれました。新しい診療所のキッチンでたくさん使い込んで、大切に育てていきたいと思います。ありがとうございました。


