アレルギー性鼻炎の治療は、症状のコントロールと生活の質(QOL)向上を目的とします。
基本的なアプローチは以下の3本柱です:
- アレルゲン(原因物質)の回避
- 薬物療法(対症療法)
- 根治的治療
これらを症状の強さや生活環境に応じて組み合わせて行います。
《 アレルゲンの回避 》
アレルギー性鼻炎の治療において、アレルゲンからの回避は基本かつ重要な対策です。完全に避けることは難しい場合もありますが、できる限り接触を減らすことで症状の軽減が期待できます。
以下に代表的なアレルゲンごとの回避方法を示します。
🌲 スギ花粉などの花粉
- 花粉飛散の多い時期(主に春)には:
- 外出時にマスク・眼鏡を着用
- 花粉の多い日(晴天・風の強い日)は外出を控える
- 帰宅時は衣服や髪に付いた花粉を玄関で払う
- 洗濯物や布団は室内干しを基本とする
- 空気清浄機の活用や、窓の開放を控える
🕷 ダニ・ハウスダスト
- 年中曝露のあるアレルゲンで、特に寝室対策が重要です:
- 布団や枕カバーを防ダニ仕様にする
- 寝具は週1回以上洗濯・乾燥
- カーペットやぬいぐるみは極力避ける
- 掃除機はHEPAフィルター付きで、週2〜3回以上
- 湿度を50%以下に保ち、ダニの繁殖を抑える
🐱 ペットの毛やフケ(動物アレルゲン)
- アレルゲンの完全除去は困難なため、以下の対策が推奨されます:
- 寝室にはペットを入れない
- 空気清浄機の設置
- 定期的なブラッシングと入浴(飼育可能な場合)
- ペットを手放すことが最も有効だが、現実的には困難なことも多い
🍄 カビ(真菌)
- 湿気を好むため、以下のような環境改善が重要:
- 浴室やキッチンの換気を徹底
- 除湿器や換気扇を活用
- 観葉植物や加湿器の使用を控える
- エアコンの内部清掃も定期的に行う
補足:アレルゲンの種類は、血液検査や皮膚テストで特定できます。自身のアレルゲンを知ることで、より効果的な回避策が可能になります。
必要であれば、症状や生活環境に合わせた個別アドバイスもできますので、お気軽にご相談ください。
《 薬物療法 (対症療法) 》
主に薬によって症状を抑えることを目的とします。以下が代表的な薬剤です:
- 抗ヒスタミン薬(第2世代):くしゃみ・鼻水を抑える
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:鼻づまりに有効
- 点鼻用ステロイド薬:強力な抗炎症作用があり、すべての症状に効果がある
- 点眼薬:目のかゆみや充血がある場合に使用
重症例ではこれらを併用し、個別に最適化します。
《根治療法》
アレルギー性鼻炎の根治治療には、手術療法(アレルギーを起こす鼻粘膜を焼くことで症状を和らげる下鼻甲介粘膜焼灼術など)やアレルゲン免疫療法などがあります。
アレルゲン免疫療法は、原因となるアレルゲン(例:スギ花粉やダニ)を少量から体内に取り込み、徐々に慣らすことでアレルギー反応を抑える治療。言い方を変えるとアレルギーの体質 (=免疫寛容) を改変させる治療です。
アレルゲンの錠剤を舌下に置く舌下免疫療法(SLIT:Sublingual Immunotherapy)や皮膚に注射する皮下免疫療法(SCIT:Subcutaneous Immunotherapy)があります。
この中で、身体への侵襲性 (傷つける度合い) が小さく、副作用の発生率・重症度が低く、且つ長期的な症状改善と根治が期待できるSLITがアレルギー性鼻炎治療の主流になっています。
次にこのSLITの有効性について詳しく説明します。